まったく迷惑なウイルスが流行したおかげで、2020年は国内外の学会や研究会に出かけることができず、うつうつとした日々を過ごされた先生方も多いことと思います。かくいう私もその一人で、2020年に飛行機に乗ったのは2月のソウル、6月の東京、11月の金沢だけで、まったくマイルの貯まらない1年でした。このため年末のこの研究会だけは何としても「on site」で開催したいという思いがありました。また、残念ながらCOVID-19の感染を避けるため今回は参加を断念されましたが、この会の創始者のひとりである谷川久一先生も、皆さんにお会いできることを大変楽しみにされていました。
2年前に河田則文代表世話人から第34回の研究会をお世話するよう指名された時真っ先に決めたことは、この研究会が始まった「翠香園ホテル」で開催することと、会で発表された研究の歴史を若い先生たちに紹介するセッションを設けることでした。従って、研究会のテーマは、昔の研究を振り返って今後の研究のヒントとできることを願い「類洞壁研究の今昔物語」としました。また、本研究会で発表された研究の歴史を紹介する事に関しては2日目に市田隆文先生の名司会のもと、有井滋樹先生、野口和典先生、河田則文先生から、「今だから話せる」といった秘話も飛び出し大変盛り上がった鼎団「類洞壁細胞研究の今日までの道のり-王道もあれば寄り道もある」で成就されました。特別講演に関しては、類洞壁細胞の研究とは、形態学の立場から肝臓の微小環境を研究するものですので、近年免疫チェックポイント阻害剤+血管新生抑制療法が導入され肝細胞癌でも注目されてきている、リンパ球浸潤と血管の関係を長年研究されてきた大阪大学微生物病研究所 情報伝達分野教授の高倉伸幸先生にお願いしました。講演内容は期待以上のもので、腫瘍組織への免疫関連細胞の浸潤と腫瘍血管構築の関係について非常に高レベルなお話を拝聴することができました。先生のお話は、今後我々の肝細胞癌の微小環境研究に役立つものと確信しています。
今回は幸運にも開催が緊急事態宣言の発出される直前であったことから、何とか「on site」と一部Webで開催でき、懇親会も非公式で人数を制限してではありましたが行え、何とか研究会本来の姿を形作ることができたのではないかと自負しています。参加人数は47名、発表演題数は21題でした。この参加人数、演題数が
たかだかなのか、この時期にしては
なかなかなのかの判断は人それぞれかとは思いますが、お世話した本人としては、大変満足のいく研究会でした。でも本当に満足できたのは、参加者がその後COVID-19を発症したという話を聞かなかったことかもしれません。
第35回の研究会は寺井崇二先生が新潟で開催されます。その時には多くの先生方が「on site」で集まれることを期待しています。
最後に、この研究会のディレクターを務めてくれた当科の中村徹先生以下スタッフの方々の努力に深謝いたします。