SINUSOID COLUMNS
第16回肝類洞壁細胞
国際シンポジウムに参加して
独立行政法人 理化学研究所
小嶋聡一
 2011年9月22日(木)〜24日(土)にイタリアフィレンチェにて第16回肝類洞壁細胞国際シンポジウム(オーガナイザー:フィレンチェ大Pinzani教授)が開催され、 成功裡に終わりました。日本からも30人近い参加があり、イタリア料理とワインに舌鼓を打ちながら、楽しくサイエンスを語り合うことができた3日間でした。

 肝線維化に血管新生が付随することはよく知られていますが、血管新生が肝線維化にどのように影響しているか?については良くわかっておらず、 最近研究を始めたところであったので、Mario Strazzabosco教授による「胆管形成と血管形成」に関するState of the Art講演や、 David Semela教授による「病的血管新生 vs 生理的血管新生」に関する教育講演など、数多くの血管新生に関連する発表は、大変勉強になりました。 勿論、自分自身のHCVプロテアーゼによるTGF-β疑似活性の発表についても、公に発表するのが今回初めてであったこともあり、 「TGF-β受容体結合予測部位はウイルスゲノム中で変異が少なく保存されているところか?」をはじめ多くの有益なコメント・質問をいただくことができました。

 このシンポジウムには、2004年スペインビルバオで開催された第12回シンポジウム(オーガナイザー:Basque Country 大Vidal-Vanaclocha教授) から参加させていただいています。当時は星細胞に関する話題が一番盛んだったように覚えています。 ご存知のとおりこのシンポジウムはEddie Wisse元Free University教授(ベルギー)によるクッパー細胞に関する国際会議として始まり、 これまでクッパー細胞、類洞内皮細胞(capillarization)、星細胞、免疫細胞と個々のプレーヤーについての話題が提供されてきましたが、 昨年の米国パサディナでの第15回シンポジウム(オーガナイザー:南カリフォルニア大塚本教授)から少し傾向が変わり、 肝臓内“ソーシャルネットワーク”とでも比喩したら良いでしょうか、肝細胞も含めて肝臓構成細胞間でのやりとり、コミュニケーション、 調和的制御とその破たんについての話題が多くなってきたように思います。その傾向は今回のフィレンチェでさらに強まり、 星細胞以外の肝臓構成細胞の重要性が再度認識されたという印象を受けました。まさに、“ルネサンス”発祥の地に相応しく、 肝類洞壁細胞研究の“ルネサンス”の始まりを感じました。

 写真は、朝食時にホテルの食堂から写したサン・ロレンツォ教会とドゥオーモの間から登る朝日の情景です。 2日目の午後、慈恵医大の松浦先生たちとご一緒させていただき、この素敵でかつ偉大なドゥオーモのクーポラに登りました。 約500段の階段をコツコツ一段ずつ登り素晴らしい景色を楽しむことができたのは、研究と同じだと思いました。 また、帰国する機中で映画“TAKAMINE”を見ました。高峰譲吉の物語りで、途中理化学研究所創立提唱の精神が描かれており、 研究者は自分のためではなく、世の中のために役に立つ研究、世の中からありがとうと言われる研究をしなくてはならないと決意を新たにすることができました。

次回は、2013年9月24日〜27日に河田教授(大阪市大)により第17回シンポジウムが大阪で開催されます。 “どーも”から“毎度おおきに”とバトンタッチも語呂が良く、ますます肝類洞壁細胞研究が盛んとなり、 社会から“おおきに”と言われる発表に溢れることを楽しみにしております。