第34回学術集会のご案内  
ご挨拶と開催案内



10月30日(金)まで
募集期間を
延長しました。
会期:
2020/12/17-18
会場:
萃香園ホテル / 福岡 久留米
過去の学術集会 
SINUSOID COLUMNS
フィレンツェでの第16回International
Symposium on Cells of the Hepatic
Sinusoid(ISCHS)に参加して
東京慈恵会医科大学・臨床検査医学講座
松浦知和
 2011年9月22日から24日までイタリア・フィレンツェ市で開催された第16回ISCHSに参加しました。 1977年からE.Wisse教授、D.L.Knook教授によってInternational Kupffer Cell Symposiumとして開始され、 当初3回は4年に1回、その後、2年に1回開催されている学術集会です。 開催当初より東京医科歯科大学の和氣健二郎教授を中心に多くの日本人研究者が参加していました。 私は、大学を卒業後4年後の1985年の当時の西ドイツ・Titiseeの学術集会から参加していますが、時代とともに「肝臓類洞壁細胞」研究の変遷を感じざるを得ません。

 1980年代は、次々にKupffer細胞、類洞内皮細胞、星細胞(fat storing cell, 伊東細胞)の 細胞分離法とそれぞれの細胞の培養法が開発されている時期で、 多くの論文が発表されていました。また、類洞壁細胞の電子顕微鏡による形態学的解析も進み、 日本も久留米大学の谷川久一教授のグループ、慶応大学の織田正也先生のグループ、 高知大学の円山英昭先生から、肝臓病態モデルや臨床例での形態学的な研究が多く発表されていました。 特に、順天堂大学の浪久利彦教授の門下の横井幸男先生、黒田博之先生が、当時、星細胞マーカーとして中間系フィラメントのデスミンを提唱し、 注目を集めている時期でもありました。1982年のフランスStrasbourgでの第3回の学術集会に参加していた横井先生から、 「あの学会は、朝から晩まで、食事も一緒で大変ですよ」と聞いていたが、本当にそうで、大学卒業後4年目に一人で参加した者にとって、大変な体験でした。 しかし、当時は外国の研究者よりも日本からの多くの研究者から直接お話しを聴けて勉強になりました。 慈恵医大病理の田中貢教授が別途参加されており、外国で右往左往している私を拾ってくれて、半日フライブルグに出かけたのは良い思い出です。

 それから25年の歳月がたつと、同じターゲットの学術集会の内容も随分と変化しています。 まず、今回の学会は塚本秀和教授が開催されたカリフォルニア州・パサディナの学術集会からわずか1年後に開催されたため、 どのくらいの参加者があるか懸念していました。特に、日本では3月11日に東日本大震災があり、私も当初は参加しないつもりでした。 しかし、日本の学会で北里研究所メディカルセンター病院の横森弘昭先生や東大病院の池田均先生に誘われたことから参加することに決めました。 何よりもフィレンツェに行ってみたいというのが本音ですが・・・

 さて、フィレンツェは町全体が何百年も変わっていない町で、宿泊したホテルは、有名なサンタ・マルタ・デル・フィオーレ大聖堂から 北側150mほどの広場にある築数百年の建物にありました。実際、この広場はフィレンツェの中ではちょっと寂れていて、 その傍らには日がな一日、そこに座って、人々の生活観察し、夜は雨のあたらない場所で寝ているような人たちもいるのですが、 驚いたことに、ホテルに掲げてあった版画をみると何百年前も同じような人たちが、同じ場所で、同じように生活していたことが描かれていました。 イタリアがどうなろうが、ユーロ維持が危うくなろうが、世界経済が破綻しようが、フィレンツェはこのままだよといった逞しさを感じました。 第16回の学術集会を開催したMassimo Pinzani教授は、星細胞を中心とした肝臓線維化研究の大家ですが、パサディナとは違う異なるもてなしをしてくださいました。 色々な理由はあるのでしょうが会期は例年より短く、2日半で発表と機論が尽くされるようにされていました。 2日目の午後はフィレンツェ市内の徒歩の観光で、ガイドについて行ってもよいし、私たちのように勝手に歩いてもよいといったところです。 学術集会は、朝8時からはじまり、イタリア料理の昼食1時間を挟んで口頭発表で埋められており、忙しい内容でしたが、 実際には会場のペルゴラ劇場の雰囲気なのかゆったりとした感じがしました。

 さて、肝心の学術集会の内容ですが、口頭発表では、臨床にリンクする研究が圧倒的に多く取り上げられていました。 特に、NASH/NAFLDの病態と肝類洞壁細胞がどのように関わっているか、腸内フローラとNASHとの間での肝類洞壁細胞の役割を明らかにする研究が多く見受けられました。 また、核内レセプターでは、FXR・PXRのagonistを利用した肝炎・肝線維化治療戦略も示されました。さらに、大阪市大の河田則文教授から、 肝臓疾患とmicroRNAに関する最新の研究について聴くことができました。一方で、以前のKupffer Cell Symposiumを知る者にとっては、 個々の類洞壁細胞ごとの丁寧な形態学を交えたTutorial lectureがあると、大学院生や若い研究者により勉強になるのではないかと思いました。 そうした中で、ベトナムから大阪市大に留学して研究を進めているLe Thi Than Thuy先生に、消化器腫瘍学での若手研究者のためのMarco Foschi賞を授与されたのは、 大変素晴らしことでした。2年後の第17回学術集会は日本で河田教授のもとで開催されますが、 ぜひ日本に近い、韓国、中国、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドの若手研究者にも参加してもらうと、より活性化されると思いました。 ポスターの中には形態的な観察も多く、特に、英国ヨーク大学のリューシュマニアに感染したKupffer細胞のin vivoでのmigrationやdynamicsを 克明に2光子レーザー顕微鏡で観察した研究は、価値が高く、こうした新規の形態と機能を解析する手法の紹介も重要な学術集会の役割だと感じました。 2年後の学術集会に、私どもの3次元共培養系での研究で発表できるように努力していきたいと思います。