第39回学術集会のご案内  
会期:
2025/7/26-27
会場:
北海道大学
医学部学友会館
「フラテ」
過去の学術集会 
第37回肝類洞壁細胞研究会
ご 挨 拶(第37回肝類洞壁細胞研究会学術集会を終えて)
第37回肝類洞壁細胞研究会学術集会 当番世話人
順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学
 教授 池嶋 健一
池嶋 健一先生写真
 第37回肝類洞壁細胞研究会学術集会を2023年12月15日(金)~16日(土)の会期で順天堂大学本郷お茶の水キャンパス7号館で開催させて頂きました。新型コロナウイルス感染症の影響も大分下火になり、対面で多くの会員の先生方にご出席頂くことが出来ましたことを大変嬉しく思います。ご参加頂いた会員の皆様に深謝申し上げます。
 類洞壁細胞研究会は、肝臓病学で肝実質細胞中心の研究が主体であった40年近く前から非実質細胞の重要性に着目して、故谷川久一先生のもと気鋭の研究者の集いとして発足した会ですが、私自身は米国留学から帰国後の1998年から参加させて頂き、早四半世紀にもなりました。本研究会を通じて、肝類洞壁細胞の形態・超微形態学的観察から単離培養系、生理機能および病態生理、さらには治療アプローチに至る国内の様々な研究に触れ、多くを学ぶことが出来ました。今日では肝臓の生理・病理を考える上で、肝類洞壁細胞の果たす役割が極めて重要であることは周知となり、メタボリックシンドローム関連の代謝障害性脂肪性肝疾患(MASLD)やアルコール関連肝疾患(ALD)など非ウイルス性肝疾患における臓器連関や代謝病態、免疫系の関与など、肝実質細胞と肝類洞壁細胞が織りなす多彩な生理的・病理的相互関係が注目されています。
 今回の学術集会では、肝類洞壁細胞の生理機能に果たす役割、すなわち類洞壁微小環境における調和と、病態形成における肝類洞壁細胞の機能的調和の乱れ(Dissonance;不協和音)を俯瞰するという観点から、テーマを「肝微小環境の調和とディソナンス」(Harmony and Dissonance in Hepatic Microenvironment)といたしました。特別講演には米国University of Southern Californiaの塚本秀和教授と東邦大学医学部生化学講座の中野裕康教授をお招きし、塚本先生からは肝星細胞と肝癌細胞のクロストークに関する知見を、中野先生からはFGF18の肝線維化促進作用に関する最新のトピックスについてご講演頂きました。シンポジウムは会のテーマでもある「肝微小環境の調和とディソナンス」と題して、大阪大学消化器内科の小玉尚宏先生には肝内胆管癌発症における肝微小環境のクロストーク、順天堂大学消化器内科の今一義先生には脂肪性肝疾患の肝内免疫系の異常、同志社大学再生医学研究室の祝迫惠子先生には肝移植における線維化進展、東海大学マトリクス医学生物学センターの稲垣豊先生には活性化肝星細胞トレーシングマウスによる細胞間クロストークの解析、とそれぞれの領域の新展開についてご披露頂きました。また、ストラテジーセッションとして順天堂大学微生物学の岡本徹先生にご専門のC型肝炎ウイルスコア蛋白室の成熟機構に関する研究をご解説頂きました。一般演題もearly carrier7演題を含め計25演題の発表を頂き、大変充実した研究会となりました。
 今回の学術集会を通じて、わが国の肝類洞壁細胞研究の順調な進歩を再確認することが出来ました。C型肝炎の抗ウイルス療法の飛躍的発展を契機に、若手医師や研究者の間で肝臓病に対する興味がやや失われているようにも危惧されますが、肝臓の病態生理は奥が深く未解決の問題が山積しています。本研究会の活動を通じて、肝類洞壁細胞研究のさらなる発展に資することが出来れば幸いです。
第37回肝類洞壁細胞研究会学術集会